ノウゼンカズラ (凌宵蔓)  のうぜんかずら科
2010年7月28日

 中国原産で花木として庭に植えられています。かずら、とは蔓性のみきをもった植物をいい、テイカカズラ、スイカズラ、など皆樹木に巻きついて高くまで登ります、祖谷渓の「かずら橋」はシラクチズル(サルナシ)の蔓を編んだつり橋で四国の名所にもなっています。

 ノウゼンカズラのノウゼンは漢名、凌宵から転訛したといいます。でも此花が咲くといかにも盛夏という感じがします、昔何処かの屋敷のアカマツの大木にぎっしりと巻きついて、松の木が真っ赤に見えるほど咲いているのを見た記憶があります。
 花は開花している時は上下に開いていますが、触ると急に閉じます。昔、貝原益軒が「花上の露目に入れば目暗くなる」と記述したため、毒であると誤解された、今でもその様に思っている人が有るかもしれないが毒ではありません。

 昔読んだ寺田虎彦の随筆の中に「凌宵花」というのがあった。少し抜粋させてもらうと、
 「小学時代に一番嫌いな学科は算術であった、いつでも算術の点数が悪いので両親は心配して中学の先生を頼んで夏休み中先生の宅へ習いに行くことになった」という書き出しで、子供たちが水遊びをしている小川を横目で見ながら先生宅へ行く、先生宅の高い松ノ木に凌宵花が隙間も無く絡んで美しい。そこで先生宅の座敷で算術の勉強をするのですが、先生は本棚から、黄表紙の木版刷りの例題集を出して、そのなかの一つをやってご覧という、考えても分からない、頭が熱くなってくる、頭を抑えて庭を見ると、笠松の高い幹に真っ赤な凌宵の花が暑そうに咲いている。(以下を要約すると先生に丁寧に教えてもらってもよく判らないので悲しくなり、結局よく判らないと見ると先生も悲しそうに声を高くすることがあった、家に帰ると何も知らない母が涼しいご馳走をこしらえ、汗だらけの顔を冷水で清め、ちやほやされるのがまた妙に悲しかった。)とあります。



ページトップ

前のページに戻る