ワレモコウ 〔吾木香?〕           ばら科
2010年11月30日

 野山に普通に生える多年生草本である、と云うことですが此の辺りではあまり見掛けません。丘陵の裾や棚田の土手などでたまに見掛けます。70〜100cmくらいの草丈で枝分かれした先に臙脂色の穂状花序を付け花弁の無い小さな花の集まりです、何故か秋の花は地味な花が多いようです。ワレモコウの花もあまり目立ちません。西坂部の「御池沼沢」に此の仲間のナガボノアカワレモコウ、が有ります。

 ところで、此の草の名前ですが、「牧野図鑑」には木香(きく科植物、ばら科の木香ではない)に日本の木香の意味でワレモコウ、(吾の木香)の名があったのが、その後、名だけが本種に移ったものかと考えられるし、あるいは古く、木香を本種と間違えてしまったのかその辺の事情は不明であると説明があります。しかし俳句や小説には「吾亦紅」が使われています。
 この辺の漢字表記の違いが気になっていたところ、朝日新聞に連載された「花おりおり」に 〔誤解の花である。吾亦紅の表記が広く知られたのは、久米正雄の小説からだろう。渋い暗紅色を「吾も紅」と納得する人は多い。が、植物学者前川文雄博士の説は違う。蕾が、宮中の御簾の上部を飾るも帽こう額の模様から生じたもっこう木瓜紋に似て、四つに割れ目が入っているので、「割れ木瓜」を語源とする。〕 とあり。また、「植物の名小事典」では赤い花を集めることを命じられた家人が、ワレモコウを取り忘れてしまったところ、ワレモコウが不服を申し立て、「われもまた紅なり」といったという。

      吾も紅なりとついと出で    高浜 虚子
      吾亦紅壮なるとき過ぎて立つ   山口 誓子




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